農的生活学校 屋代村塾
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屋代村塾設立趣意書
1.設立の経緯
  屋代村塾の設立者であり、塾の総括代表(塾長)を務めようとする大塚は、過去10年近くにわたって、和光大学、早稲田大学等で学生を農村に引率し、農民との交流を通じて新しい経済社会の在り方を考察するという教育実践をおこなってきました。それは、「農」に基づく野外学習であり、農業と非農業の共生、農村と都市の共生を探求する実験教育でした。さらに大塚は、学生をアジア等の海外にも引率し、農家滞在を採り入れながら、日本とアジアの共生、日本人と外国人の共生を模索してきました。
  この度、大塚の生家のある山形県高畠町屋代地区細越部落内にセミナーハウス(研修と交流の施設)を建設し、今までの教育実践をいっそう充実・発展させ、地域住民と密接に連携しながら、教育・文化運動を推し進めていくことを決意するに至りました。
高畠町が豊かな歴史と文化に満ちあふれた地域であること、自然環境に恵まれていること、農業が町の中心産業であること、農産物・畜産物などの食べ物が格別に美味しいこと、新しい町作り、地域作りが期待されること、有機農業運動などの先駆的活動が内発的に生まれ、展開されてきた創造力に富む地域であること、伝統的に町民の文化意識が高く、反骨精神に富み、また素朴な心の暖かさも依然として残っていること、大塚が生まれ育った素晴らしい故郷であることなどの理由から当地が選ばれました。
  かつて吉田松陰は、長州藩に設立された松下村塾で、日本の近代国家建設を担うことになる多くの有能なリーダーを育てました。それは、「脱亜入欧」を強調しながら上から(中央政府主導)の近代国家形成を説く教育実践でした。大塚は屋代村塾を拠点にして、21世紀の新しい日本を、そして世界をリードして行ける思考力と実践力を備えた若者を育成したいと切望し、本塾の建設に取り組み始めました。その場合の中心思想は「共生社会」の実現にあり、農の重要性を認識した下から(自立的な民衆主導)の社会作り、内発的発展の模索、さらには地域や国家を超えたインターナショナルな世界作りが志向されます。この教育実践が同時に、高畠町および屋代地区の人々にも少なからぬ影響を及ぼし、当地域の文化水準の向上につながり、地域活性化に貢献できるものと期待されます。

2.趣旨
  屋代村塾はすべての人に開かれた学習と交流の場です。共生社会の実現に向けて、あらゆる角度から考察と実践が試みられます。「共生」には、自然と人間の共生(環境問題)、農村と都市の共生(地方と中央の問題)、生産者と消費者の共生(農業・経済・経営の問題)、外国人と日本人の共生(国際化・平和の問題)、発展途上国と先進国の共生(南北問題)、障害者と健常者の共生(人権・福祉の問題)、男と女の共生(男女差別の問題)、生徒と教師の共生(教育の問題)等々さまざまな内容が含まれます。
  大塚が理想と考える共生社会においては、「教育」と「農業」の役割がとくに大事になってきます。真に開かれた教育は人を誠実に耕し(cultivate)、自然を大切にする農業は愛情深く土を耕すところに特色があります。前者は一人一人の個性を引き出すことに力点が置かれ、後者では農作物の一つ一つに安全で新鮮な実りが期待されます。双方は、共に生命を育成する(耕す)営みを行い、生命の素晴らしさを教えてくれるという点で共通性を持っています。小さな生命や弱者にも配慮することの大切さを認識させてくれます。教育と農業を軽視する社会は、生命をおろそかにする社会に堕し易いと言えます。そのような社会は、世界の歴史が明白に示しているように、やがて衰退に向かってしまうのです。当塾では、教育と農業の重要性を強調しながら、来るべき新しい理想社会の構築を目指して、さまざまな観点から学習を試みると同時に、参加者の交流を深め合うことを目的とします。

3.事業
  夏休み、冬休み、春休みなどの学校の長期休暇中が、屋代村塾の中心的活動期間となります。とくに7〜8月の夏季休暇期間には、集中的な事業プログラムが企画されます。具体的には、大学生の研修合宿、寺子屋講座、ホームステー、都市住民と地元住民との共同学習や交流会、地元住民主体のイベント(音楽会や講演会)、外国人を迎えての国際交流会、他の組織団体との交流会等々です。
  大学生や都市住民の場合、滞在中に原則として農業体験を行うプログラムを採り入れます。そのためには、地元住民の協力が不可欠です。たとえわずかな時間であれ、農作業を通じて農業に触れ、農民と交流することは合宿参加者にとって大変意義深いと考えます。外部の人々は、地元民と親睦を深める中で屋代地区および高畠町の良さを見出し、自分のライフスタイルを異なる視点から考えてみる良い機会にしていけるでしょう。
  屋代村塾の事業は、地元の人々にどのような影響をもたらし得るでしょうか。事業に参加した地元民は、何らかの知的刺激を受け、また外部の人々との交流を通じて新しい自己を発見することになるかも知れません。屋代にいて、さまざまな講義や講演が聴けるという新しい状況も生まれてくるでしょう。今後における屋代地区および高畠町の前進は、住民の更なる知的水準の向上、文化水準の向上なしには達成されないと考えます。農村社会の崩壊過程で、たとえカネやモノを獲得しても、それが本当の豊かさの結びついていくとは言えません。カネやモノに振り回された生活を送っている人を観察すれば、豊かな人生には至らないことがわかります。
  今こそ私たちが、「真の豊かさとは何か」を思考する時期に来ているのではないでしょうか。なぜ日本で農業が敬遠されるのか、今後日本はどう進むべきか、世界との関係はどうあるべきかを深く考察すべき段階に来ているように思われるのです。そうしなければ、日本は、そして世界は、環境、人口、資源、人権、福祉といった困難な問題を解決することができず、混乱と衰退の道をたどることになり兼ねません。この屋代地区においても、豊かな自然や文化や食物や人間関係が失われたり、変質していくかも知れません。大学生や都市住民との交流を通じて、地元の人々が屋代地区、高畠町の長所を再認識し、地域のいっそうの活性化のために努力を継続していくことが強く望まれます。
  屋代村塾ではさまざまな講義や講演が企画されます。それは一方通行的講義ではなく、少人数規模の寺子屋的学習が中心であり、参加者の意見交換が尊重されます。講師には地域内・地域外、国内・国外を問わず、多くの人々の積極的参加が期待されます。地元にはその道に研讃を積んだ有能な人が多数実在しますし、外部からの講師の協力も得られるでしょう。当塾は高畠町の行政側とも密接な関係を保ちながら運営を図っていきたいと考えています。行政側にとっても、当塾の活動はプラスの効用をもたらすものと確信しますし、地域の活性化のために行政側と協力関係を維持しながら、着実に屋代村塾の内容を充実させることに努めていくつもりです。

4.運営
  屋代村塾の運営は、運営委員会を中心に進められます。運営委員会には、大塚の他に地元の協力者(趣旨に賛同してくれる人)やさまざまな人が加わり、幅広い観点から当塾の繁栄に努めていくことになります。特定の政治団体や宗教団体、その他の団体に傾斜するような活動は慎まなければなりません。教育と農業に関心を持つ人ならば、そして「共生の思想」に賛成する人ならば、誰でも自由に参加し、可能ならば運営委員として積極的に事業の遂行に当たっていくことが望まれます。
  塾のメンバーとしては塾生制を採用し、できる限り年会費を低額に抑え、多くの人が気楽に当塾に出入りし、学習なり交流なりを深められる組織にしたいと考えています。塾生として参加することが困難な場合、強力会員等の形で当塾への関わりを保持することも可能です。事業の活動に対するカンパも大いに歓迎します。
  今春に屋代地区の有志が立ち上がり、「屋代村塾支援会」が設立されました。塾長として、大変心強く、有り難いことと感謝しています。高畠町には「共生塾」など活発な研修・交流組織が少なからず存在します。これらの組織と良き協力関係を築き、同時に、当塾独自の特性を発揮しながら活動を進めていきたいと考えています。また、細越部落の方々にも協力をお願いしなければなりません。
  何事もそうですが、オープニングだけは華々しく打ち上げて、やがて尻すぼみになるケースがしばしば見られます。そうならないために、まずやれるところから小規模で地道にスタートし、徐々に力をつけて行ければと念じています。形式や規模ではなく、中身が大事であるという認識です。「small is beautiful」の視点から出発したいと思います。今後、屋代村塾の発展のために互いに力を合わせて頑張って前進したいものです。

                   1994年7月24日
                                           屋代村塾塾長  大塚勝夫

   屋代村塾に関する参考文献
      大塚勝夫「共生時代のエコノミー〜真の豊かさとは何か〜」   新評論 1992年
      大塚勝夫「農的生活〜競争から共生へ、新しいライフスタイルの提案〜」
                                       NECクリエイテイブ 1994年

 
 
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